システム開発プロジェクトを成功させるために不可欠なRFP(Request for Proposal:提案依頼書)。プロジェクトの目的や要件を明確に伝え、最適な開発パートナーを選定するためのこの重要文書について、基礎知識から作成手順、評価方法まで、実践的なポイントを解説します。
1. RFP(Request for Proposal)の基礎知識
システム開発を成功に導くためには、発注側と開発会社の間で明確なコミュニケーションを取ることが重要です。その際に不可欠となるのが、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)です。RFPを作成することで、プロジェクトの目的や要件を明確に伝え、最適なシステム開発会社を選定することができます。
1-1. RFPとは:意味と重要性
RFP(Request for Proposal)は、システム開発会社に対して具体的な提案を依頼するための文書です。発注企業が自社のシステム開発を依頼したい内容について、現状の課題や要件を詳細に記載し、開発側に提示して提案を求めます。
RFPの重要性は、以下の3点に集約されます。
- 発注側の要件を明確に伝えることができる 
- 複数のシステム開発会社から提案を受けることで、最適な開発パートナーを選定できる 
- プロジェクトの目的や予算、スケジュールを明確にすることで、トラブルを未然に防ぐことができる 
1-2. RFP・RFI・RFQの違いと使い分け
情報システムの調達プロセスでは、RFPの他にもRFIやRFQという文書が使用されます。それぞれの違いを理解し、適切に使い分けることが重要です。
RFI(Request for Information:情報提供依頼書)は、システム開発会社の情報収集を目的とした文書です。市場調査や技術動向の把握、概算費用の確認などに活用されます。
RFQ(Request for Quotation:見積依頼書)は、具体的な見積もりを依頼する文書です。RFPよりも詳細な仕様が決まっている段階で使用されます。
一般的な流れとしては、RFI → RFP → RFQの順序で進められることが多く、段階的に要件を具体化していきます。
1-3. システム開発におけるRFPの役割
システム開発会社との関係において、RFPは重要なコミュニケーションツールとしての役割を果たします。発注者側の意図を正確に伝え、受注側が適切な提案をするための基盤となります。
具体的な役割として、以下の点が挙げられます。
- プロジェクトの目的や背景の共有 
- システムに求める機能要件の明確化 
- 予算やスケジュールの条件提示 
- 評価基準の明示 

2. RFP作成の準備
2-1. 自社の現状課題の整理
RFPを作成する際には、まず自社の現状把握と課題の整理が不可欠です。この段階で明確にすべき項目は以下の通りです。
- 現行システムの問題点 
- 業務上の非効率な点 
- システム導入後に期待する効果 
- 解決したい具体的な課題 
これらの項目を整理することで、システム開発会社に対してより具体的な提案を求めることができます。
2-2. システム開発会社への要件整理
システム開発会社に期待する要件を明確にすることは、最適な開発パートナーを選定する上で重要です。以下の点について整理しましょう。
- 必要な技術スキルや経験 
- 開発体制への要求事項 
- セキュリティ要件 
- 保守・運用体制への期待 
2-3. プロジェクトの目的と予算設定
プロジェクトの成功には、明確な目的と適切な予算設定が欠かせません。以下の項目を具体的に記載してRFPを作成しましょう。
- プロジェクトの目的と期待する効果 
- 予算の上限と費用の内訳 
- 開発スケジュールの見込み 
- システム導入後のROI(投資対効果) 
これらの要素を適切に準備することで、受注側であるシステム開発会社からより具体的で実現性の高い提案を受けることが可能となります。また、発注者側としても、プロジェクトの成功基準を明確にすることができます。

3. RFPの具体的な作成手順
RFPを作成する際には、システム開発会社に対して明確な要件を提示することが重要です。ここでは、効果的なRFPを作成するための具体的な手順を解説します。
3-1. RFPのフォーマットと構成
RFPの基本的な構成は以下の要素で成り立ちます。
- プロジェクト概要と背景 
- 現状の課題と解決したい事項 
- システムに求める機能要件 
- 非機能要件(性能・セキュリティなど) 
- 予算・スケジュール 
- 提案書の提出要件 
3-2. 必須記載事項と任意記載事項
RFPに記載する内容は、必須項目と任意項目に分けて考える必要があります。発注企業として以下の項目を明確にしましょう。
必須記載事項
- プロジェクトの目的 
- システム要件の詳細 
- 納期と予算範囲 
- 提案書の提出期限 
- 評価基準 
任意記載事項
- 現行システムの詳細情報 
- 将来的な拡張性への期待 
- 参考となる類似システムの情報 
3-3. 記載内容の詳細化と優先順位付け
システム開発会社が適切な提案をできるよう、要件の優先順位を明確にします。以下の点に注意してRFPを作成しましょう。
- 必須要件とオプション要件の区別 
- 機能要件の優先順位付け 
- 予算配分の重点項目 

4. RFP作成時の重要ポイント
4-1. 発注側として押さえるべきポイント
RFPを作成する際、発注企業として以下の点に特に注意を払う必要があります。
- 自社の業務プロセスの明確化 
- システム導入後のゴール設定 
- 必要な予算の確保 
- スケジュールの現実性 
4-2. システム開発会社が求める情報
受注側であるシステム開発会社が適切な提案を行うために必要な情報を明確に記載します。
- 現行システムの構成と課題 
- 想定ユーザー数と利用形態 
- セキュリティ要件 
- 保守・運用の要件 
- システム連携の必要性 
4-3. 具体的な記載例と解説
効果的なRFPの記載例を以下に示します。
システム要件の記載例
- 「ユーザー管理機能において、役割別の権限設定が可能であること」 
- 「データバックアップは1日1回以上自動で実行されること」 
- 「システムの応答時間は3秒以内であること」 

5. RFPの評価と選定
5-1. 提案書の評価基準設定
システム開発会社からの提案を適切に評価するため、以下のような評価基準を設定します。
- 技術力と実績 
- 提案内容の具体性 
- 価格の妥当性 
- プロジェクト体制 
- 保守・サポート体制 
5-2. システム開発会社の選定方法
提案書を評価し、最適なシステム開発会社を選定するためのプロセスを確立します。
- 一次評価(書類審査) 
- 二次評価(プレゼンテーション) 
- 最終評価(詳細な見積もり確認) 
5-3. 契約交渉のポイント
選定後の契約交渉では、以下の点について明確な合意を形成することが重要です。
- 開発スコープの確定 
- 契約金額と支払い条件 
- 納期と中間マイルストーン 
- 品質保証条件 
- 保守・運用体制 
これらの要素を慎重に検討し、発注側と開発会社の双方が納得できる契約内容を策定していきます。RFPの作成から契約締結まで、一貫した方針を持って進めることが、プロジェクトの成功につながります。

6. RFP活用の実践的アプローチ
作成したRFPを効果的に活用し、最適なシステム開発会社を選定するためには、戦略的なアプローチが必要です。ここでは、RFPの配布から提案評価までの具体的な進め方について解説します。
6-1. 効果的なRFP配布と説明
RFPの配布方法と説明会の実施は、質の高い提案を受けるための重要なステップです。以下の点に注意して進めましょう。
- 配布対象となるシステム開発会社の選定基準 
- RFP説明会の開催方法と内容 
- 守秘義務契約の締結 
- 質疑応答の期間設定 
6-2. 質疑応答の進め方
システム開発会社からの質問に対する回答方法を統一し、公平性を確保することが重要です。
- 質問受付期間の設定 
- 回答方法の統一(一括回答形式) 
- 追加情報の提供基準 
- 回答内容の記録と管理 
6-3. 提案評価の具体的手法
提案書の評価には、客観的な基準と評価プロセスが必要です。以下の要素を考慮して評価を行います。
- 技術要件の充足度 
- 提案内容の具体性と実現可能性 
- 開発体制の充実度 
- コストパフォーマンス 
- 保守・運用体制の充実度 

7. RFP作成後のフォローアップ
7-1. プロジェクト開始後の活用方法
RFPは、プロジェクト開始後も重要な参照文書として活用されます。以下の場面でRFPを活用しましょう。
- 要件定義書作成時の基準文書 
- プロジェクトスコープの確認 
- 進捗管理の基準 
- 成果物の評価基準 
特に、システム開発会社との打ち合わせにおいて、RFPは合意事項を確認する際の重要な拠り所となります。
7-2. RFPの更新と改善
プロジェクトの進行に伴い、RFPの内容を更新・改善することも重要です。以下のタイミングで見直しを行いましょう。
- 要件の変更・追加が発生した場合 
- 技術的な制約が判明した場合 
- 予算やスケジュールの変更が必要になった場合 
- ステークホルダーからの新たな要求が出た場合 
7-3. 今後の展開に向けて
RFPの作成と活用の経験は、今後のシステム開発プロジェクトに活かすことができます。以下の点を意識して、組織としてのRFP作成能力を向上させましょう。
- 成功事例と失敗事例の記録 
- RFPテンプレートの整備と改善 
- 評価基準の見直しと更新 
- 社内ナレッジの蓄積と共有 
また、以下の要素を継続的に改善することで、より効果的なRFP作成が可能になります。
- 業界動向や技術トレンドの把握 
- システム開発会社との関係構築 
- 社内の要件定義プロセスの改善 
- プロジェクトマネジメント能力の向上 
最後に、RFPは単なる文書ではなく、プロジェクトの成功を左右する重要なツールであることを忘れないでください。発注企業として、システム開発会社との良好な関係を構築し、プロジェクトを成功に導くための第一歩として、RFPを活用していきましょう。
また、RFPの作成と活用は、組織のシステム開発能力を高める重要な機会でもあります。この機会を通じて、発注側としての経験とノウハウを蓄積し、より効果的なシステム開発プロジェクトの実現を目指していきましょう。

よくある質問と回答
RFPとRFIの違いは何ですか?
RFPは具体的な提案を依頼する文書であり、RFIは情報収集を目的とした文書です。RFIはプロジェクトの初期段階で使用され、市場調査や技術動向の把握に活用されます。一方、RFPはより具体的な要件を示し、実際の提案を求める段階で使用されます。
RFPの作成費用はどのくらいかかりますか?
RFPの作成費用は、プロジェクトの規模や複雑さによって大きく異なります。社内リソースで作成する場合は直接的な費用は発生しませんが、外部のコンサルタントに依頼する場合は、数十万円から数百万円程度の費用が必要となることがあります。
RFPには具体的に何を記載すべきですか?
RFPには、プロジェクトの目的、現状の課題、システム要件、予算、スケジュール、選考基準などを記載します。特に重要なのは、システムに求める機能要件と非機能要件、予算範囲、納期などの具体的な条件です。
システム提案書とRFPの違いは何ですか?
RFPは発注側が作成する提案依頼書であり、システム提案書は開発会社が作成する提案文書です。RFPが要件や条件を示すのに対し、システム提案書はそれらの要件に対する具体的な解決策を提示します。
RFPの作成にはどのくらいの期間が必要ですか?
一般的なRFPの作成期間は1〜3ヶ月程度です。ただし、プロジェクトの規模や複雑さ、社内の意思決定プロセスによって変動します。綿密な要件定義と関係部署との調整に十分な時間を確保することが重要です。

どのような基準で発注先を選定すればよいですか?
発注先の選定には以下の基準が重要です。 1. 提案内容の質 – 要件の理解度 – 解決策の具体性 – 技術的な実現可能性 2. 実績と信頼性 – 類似プロジェクトの経験 – 顧客評価 – 財務状況 3. プロジェクト体制 – チーム構成 – プロジェクト管理能力 – コミュニケーション体制
システムを導入する際のRFP作成のポイントは?
システム導入時のRFP作成ポイントは、 1. 現状分析の明確化 – 既存システムの課題 – 業務フローの問題点 – 改善目標の設定 2. 要件の具体化 – 機能要件の詳細化 – 非機能要件の明確化 – 運用要件の定義 3. 評価基準の設定 – 技術評価項目 – コスト評価方法 – 提案企業の評価基準
最適な提案を引き出すためのRFPの書き方は?
効果的な提案を得るためのRFP作成のコツは、 1. 明確な目標設定 – プロジェクトの目的 – 期待される成果 – 優先順位の明示 2. 適切な情報提供 – 現状の詳細な説明 – 制約条件の明示 – 予算範囲の提示 3. 提案の自由度確保 – 代替案の許容 – 独自提案の奨励 – 質問機会の設定
RFPの評価プロセスはどのように進めるべきですか?
効果的な評価プロセスの進め方は、 1. 評価チームの構成 – 技術評価担当 – 業務要件評価担当 – コスト評価担当 2. 評価基準の設定 – 定量的評価項目 – 定性的評価項目 – 重み付けの決定 3. 評価の実施 – 書面評価 – プレゼンテーション評価 – 総合評価の実施
RFPを作成する際の一般的な失敗とその対策は?
一般的な失敗とその対策として、 1. 要件が曖昧 – 具体的な数値目標の設定 – ユースケースの提示 – 優先順位の明確化 2. スケジュールの非現実性 – 適切な期間設定 – マイルストーンの明示 – バッファの確保 3. コミュニケーション不足 – 質疑応答期間の確保 – 説明会の実施 – フィードバックの提供
検討を進める上で困った時は
									テクノロジーを進めようとするときには、そもそも外部パートナーに依頼すべきか迷っている、どういう企業に声掛けをすればいいか分からない、想定しておくべき予算や相場が分からないなど、様々なお悩みが出てくるものと思われます。
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